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「答えは、挑戦の先にある。」

 15年のプロサッカー人生を経て、田邊草民が歩む自分らしい”心ときめく歩き方”

今回お話を伺ったのは、FC東京やスペイン・CEサバデル、アビスパ福岡でプレーし、15年間プロサッカー選手として活躍された田邊草民氏です。

國學院久我山高校を卒業後、2009年にFC東京へ加入。スペイン2部リーグ・CEサバデルへの期限付き移籍を経験し、2019年からはアビスパ福岡でプレー。2023年に現役生活へ幕を下ろしました。

現在は、福岡県社会人サッカーリーグ1部に所属する「パスチャライズ福岡」の監督を務めるほか、サッカースクールの運営など、新たな挑戦を続けています。

現役時代の歩みや、引退後のセカンドキャリアで感じたこと、そして挑戦を続ける中で見えてきた「好きなことを仕事にする」という考え方について、お話を伺いました。

プロ生活を経て見えた「好きなことを仕事にする」とは

15年間、いくつものクラブでプレーし、最後の1年は膝の怪我の影響で思うようにプレーできない日々が続きましたが、最後はアビスパ福岡で現役を引退することを決意し、自分なりに納得した形でプロ生活を終えることができました。

現役引退後は、広告代理店で働くという新たな環境にも身を置きました。会社から今後についてのお話もいただいていましたが、「いつかは自分で事業をやりたい」という思いを諦めきれず、新たな挑戦を選びました。

実際に事業を始めてみると、想像していた以上に大変でした。社会人として働き、自分で事業を立ち上げる経験をした今だからこそ、15年間、プロサッカー選手として「好きなことを仕事にできていた」ということが、どれほど幸せなことだったのかを改めて実感しています。

もちろん、選手時代も試合に出られない時期や、その日その日で悔しい思いをすることもありました。それでも、メンタルが壊れるほど落ち込むことはありませんでした。

なぜなら、どれだけ悔しいことがあっても、サッカーをすること自体が楽しかったからです。プレーすることは、自分にとってストレス発散でもありました。だからこそ、「来週の試合で取り返そう」と自然に気持ちを切り替え、前を向くことができたのです。

プロの世界は、結果がすべてです。週末のピッチで何を見せられるか。その厳しい環境の中でも、多くの選手は他人ではなく、自分自身と向き合い、「勝ちたい」「もっと上手くなりたい」という思いを原動力に努力を続けています。

どれだけ難しい壁があっても、「できる」と信じられるから挑戦できる。そして、その挑戦を積み重ねるたびに、自分の可能性や見える景色は広がっていきます。

好きなことを仕事にするというのは、ただ好きだから続けられるということではありません。結果が求められる環境の中でも、自分の可能性を信じ、理想の未来に向かって挑戦し続けられること。その積み重ねが、人を成長させ、人生を豊かにしていくのだと思います。

15年間のプロ生活、そして引退後の新たな挑戦を経た今だからこそ、そのことを強く実感しています。

指導者として向き合う「チームづくり」

現役を引退した後、新たな挑戦として出会ったのが、福岡県社会人サッカーリーグ1部に所属する「パスチャライズ福岡」の監督という仕事。監督就任1年目には福岡県リーグで優勝し、九州リーグ昇格を懸けた入れ替え戦まで進むことができました。

もともと力のあるチームだったことに加え、選手たちが本当によく頑張ってくれました。チーム全員が同じ方向を向いて戦えたシーズンだったと思いますし、優勝した瞬間は本当にうれしかったです。

一方で、九州リーグ昇格への道は決して簡単ではありません。入れ替え戦は一発勝負。昨年も試合をリードしながら、最後はPK戦の末に敗れました。

チームには30人ほどの選手が所属していますが、全員が仕事をしながら週1回の練習に参加し、週末の試合に臨んでいます。限られた時間の中でチームとしての完成度を高め、九州リーグ昇格を目指すことは決して簡単なことではありません。

監督になってからは、「どうすれば選手たちが一番力を発揮できるのか」を以前より深く考えるようになりました。結果が出ない時には、「もっと違う伝え方があったのではないか」「声の掛け方を変えたほうが良かったのではないか」と、自分自身を振り返ることも少なくありません。

そんな時に思い出すのが、現役最後に指導を受けたアビスパ福岡の長谷部監督です。長谷部監督は、サッカーの戦術だけでなく、一人ひとりの選手と真摯に向き合い、チームというコミュニティが良い雰囲気であり続けるための土台を築いていました。その姿勢が選手たちの信頼につながっていたのだと思います。その背中を見てきたからこそ、自分も「選手から信頼される監督でありたい」と考えるようになりました。

社会人チームでは、「純粋にサッカーを楽しみたい」という思いでプレーを続ける選手もいれば、高い基準を示すことで成長する選手、伸び伸びとプレーできる環境だからこそ力を発揮できる選手もいます。だからこそ大切なのは、一人ひとりに合った関わり方を考え、全員が100%の力を発揮できる環境をつくることです。

今、監督として大切にしているのは、「選手ファースト」という考え方。勝利だけを追い求めるのではなく、人とのつながりや礼儀を大切にしながら、それぞれがサッカーを楽しみ、真剣に向き合えるチームでありたい。そうした積み重ねが選手同士の信頼を育み、チームの力を最大限に引き出し、結果にもつながっていくと信じています。

チームには、それぞれの色があります。だからこそ、チームづくりにも正解はありません。選手一人ひとりと向き合いながら、自分たちらしいチームをつくり、その先にある九州リーグ昇格を目指して、今年も挑戦を続けていきます。

悩みながらも、挑戦する道を歩み続ける

一緒にサッカーをやってきた仲間も、今では大手企業で働いていたり、海外で活躍していたりと、それぞれ違う人生を歩んでいます。20代の頃とは話す内容も変わり、家族のこと、仕事やキャリア、この先の人生について語り合うことが増えました。

それぞれ違う道を歩んでいるからこそ、悩みの形も人それぞれです。でも話を聞いていると、30代という節目で、自分の人生や幸せについて改めて考える人が多いように感じます。

僕自身も、その一人です。「何が一番やりたいのか」と聞かれると、まだ明確な答えはありません。だからこそ、まずは自分の強みを生かせることから挑戦してみようと思いました。

その一歩として、最近は城南区の城南中学校でサッカースクールを始めました。子どもたちに教えることは好きですし、新しい学びもたくさんあります。今はその時間を楽しみながら学びを深め、監督やスクール、イベントなど、さまざまな仕事にも携わらせていただいています。

一方で、サッカー以外のビジネスにも挑戦したいという思いは今も変わりません。そんな自分を考えるたびに思い出すのが、引退した頃に長谷部監督から掛けてもらった言葉です。

「君は、これだと決めるまでに時間はかかる。でも、一度決めたら強い。こだわりが強いからね。」

当時はあまり実感がありませんでした。でも今振り返ると、あの言葉は、自分がいろいろなことに挑戦している今だからこそ、腑に落ちるようになりました。

引退後、さまざまなことに取り組んできましたが、自分が本当にやってみたいと思っていることの、まだ10分の1くらいしかできていない感覚があります。それでも、まずは行動してみたからこそ、多くの学びや気づきを得ることができました。今振り返ると、その一つひとつの経験はすべて必要なプロセスであり、その10分の1を経験できたこと自体が、自分にとっては大きな一歩だったと感じています。

これからも、遠回りに見える道も自分らしい歩みの一つだと信じながら、自分らしく挑戦を続けていきたいと思っています。

あとがき

今回の取材を通して感じたのは、どんな道を歩んできた人でも、人生の節目では悩み、迷いながら、自分なりの答えを探しているということでした。

15年間プロサッカー選手として活躍された田邊さんも、引退後は新たな挑戦を重ねながら、自分らしい道を探し続けています。その姿からは、「答えは最初から見つかっているものではなく、挑戦を重ねる中で少しずつ見えてくるものなのかもしれない」ということを教えていただいたように感じました。

この記事が、新しい一歩を踏み出そうとしている方や、自分らしい道を探している方にとって、そっと背中を押すきっかけになれば嬉しく思います。

貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。