病院で栄養士として3年間勤務した後、フィットネスジムでトレーナー・インストラクター・管理栄養士として経験を積み、スポーツジムの立ち上げコンサルティングにも携わってきた今井愛実氏。現在は『Personal training gym 歩夢』を運営し、一人ひとりに寄り添った運動指導や栄養サポートを行っています。
また、専門学校やセミナーの講師、企業向けの健康経営支援、商品開発、健康アプリ開発など幅広く活動。サッカースクールのアシスタントコーチやサッカーU18寮の献立開発、ゴルフやアーチェリーのトレーニング指導にも携わるなど、スポーツ現場での実践経験も豊富です。
「食」と「運動」の両面から人々の健康を支え続ける今井氏のこれまでの歩みや大切にしている想いについて、「心ときめく歩きかた」を伺いました。
学生時代の経験が教えてくれた夢
中学から始めたソフトテニスでは、競技成績を追い求めるというよりも、“楽しみながら競技に取り組む”チームに所属していました。しかし高校ではもっと上手くなりたいという思いから、通える範囲で最も強い高校へ進学。進学校だったこともあり、勉強と部活動の両立は想像以上に厳しいものでした。
当時の私は「競技も勉強もどちらも全力で取り組まなければならない」と考え、睡眠時間を削りながら、朝5時に起きてお弁当を作り、授業と部活動を終えた後は夜遅くまで課題に取り組む日々を送っていました。その結果、心身ともに余裕を失い、「部活から逃げたい」と思うほど追い込まれていました。
今振り返ると危険な状態でしたが、当時は知識もなく、相談できる人もいなかったため、その身体の状態が当たり前だと思っていました。その中で課題に感じたのが、テニスの技術指導を受ける機会はあっても、身体づくりや食事、ケガへの対応について学ぶ機会がほとんどなかったことです。この経験が、「部活動の環境改善をしたい」という現在につながる夢の原点になりました。
高校生で体脂肪率が13%ほどまで落ちた経験から食事の重要性を実感し、まずは栄養士の道へ進学しました。しかし、根底には「スポーツに関わり続けたい」という思いがあり、短大で栄養士資格を取得後、実務経験を積みながら管理栄養士の国家試験に挑戦。その後、トレーナーの学校にも通い、知識と技術を磨いていきました。
当時の経験は、現在のアスリートサポートにも活かされています。プロアスリートが競技の壁に直面した時、その苦しさを理解することはできなくても、理解しようと寄り添うことはできる。その背景には、私自身が部活動に全力で向き合い、悩みながら進んだ経験があります。
また、当時の監督は、競技だけでなく人生について深く考えるきっかけを与えてくれた存在でもあります。今では、その経験も出会いも含めて、自分に夢を与えてくれた大切な財産だと感じています。


人が前向きになれる場所を目指して
栄養士とトレーナーの学校を卒業した後は、フィットネス・スポーツジムの立ち上げをはじめ、アスリートサポートなどさまざまな現場を経験しました。
アスリートをサポートすること自体には大きなやりがいを感じていましたが、「身体を良くする場所であるはずなのに、ポジティブな空気ではない」と感じた現場もありました。もともと私は、人が前向きになるためのツールとして栄養や運動に関わり始めたため、その理想とのギャップに強い違和感を抱くようになりました。
その経験をきっかけに、「自分が本当にやりたいジムをつくろう」と考えるようになりました。
目指したのは、ビルの一角にあるような一般的なジムではなく、訪れた方が気持ちを切り替えたり、少し特別な気分になれたりする空間です。そして、その想いを形にするため開業を決意しました。
開業を決めて間もなく、以前ジムの立ち上げでご一緒した建築士の方から物件を紹介していただきました。その話を聞いた当日に現地へ足を運ぶと、木の温もりを感じられる室内と、窓の外に広がる豊かな緑が印象的でした。さらに周辺にはシェアサロンや本屋、カフェなどがあり、管理栄養士としての強みを活かせるキッチンやコンロも備わっていました。
その空間を見た瞬間、「ここだ」と直感しました。
不安もありましたが、すぐに物件を決めて開業へ向けて動き始めました。初めて内見してからオープンまではわずか2か月余り。家族にも協力してもらいながら、少しずつ理想の空間を形にしていきました。
しかし、その時期はちょうどコロナ禍の真っ只中。大々的な見学会なども開催できない状況でのスタートでした。それでも少しずつお客様に想いが伝わり、現在も長く通ってくださっている方からは、「ここじゃなかったら続かなかった」と言っていただくこともあります。
振り返ると、これまで経験してきたことや出会ってきた人とのつながり、そのすべてが今につながっているように感じています。『Personal training gym 歩夢』は、そうした積み重ねの中で成長を続け、6周年を迎えることができました。


点と点が繋がるように積み重ねた経験が未来をひらく
挑戦したことや、興味を持ってやってみたことは、全部どこかでつながっていくのだと感じられるようになってから、「まずはやってみよう」と思えることが増えました。
私はアニメや漫画がとても好きなのですが、栄養士の学校へ進学する時、勉強に集中するために全部処分しました。それでも、本当に好きなものはまた手に取るようにしています。
すると今、その趣味が子どもたちとの関わりの中で活きています。初めて会うお子さんでも、好きなアニメのキャラクターのセリフを言うと一気に心を開いてくれることがありますし、運動指導の際にも、「この時は股関節を使っているんだよ」とアニメの動きに例えて伝えると、より理解しながら身体を動かしてくれることがあります。
以前はただの趣味だと思っていましたが、今ではそれも仕事の中で活かせる大切な要素の一つになっています。そうした経験を通して、どんなことも無駄になることはなく、いつかどこかでつながっていくのだと感じています。
また、人との出会いも今につながっていると感じる出来事がありました。
以前、紹介していただいたトレーナーの方が近くでセミナーを開催されていて、終了後に少しお話をさせていただきました。その時は、その場限りのご縁になるだろうと思っていたんです。
ところがその日、普段はほとんどしない忘れ物をして会場へ戻った際に、その方と再びお会いしました。その時に胸ポケットに残っていた1枚の名刺を渡してくださり、「東京に来る時は連絡して」と声をかけていただいたんです。
おそらく、その方にとっては軽いご挨拶程度だったのだと思います。ですが、実際に東京へ行く機会ができた際に、「ぜひご飯に行きましょう」とこちらからご連絡させていただきました(笑)。そこから少しずつ関係性が深まり、お仕事のお話をさせていただく機会にも繋がっていきました。
そうやって行動していると、ご縁やタイミングが重なり、自分が一緒にいて楽しいと感じる方々とつながる機会が増えていったように感じています。
そして近年では、これまでの経験が実を結び、自治体のスポーツ振興課と一緒にジュニアアカデミーに携わらせていただいています。年長さんから小学6年生までの子どもたちを対象にした活動をサポートしており、今年からはアスリート発掘事業にもお声がけいただき、食育講習や運動面のサポートにも関わらせていただく運びとなっています。
これからも一つひとつの活動を大切に積み重ねながら、高校生の頃から抱き続けている「部活動の環境改善をしたい」という夢の実現につなげていきたいと思っています。



あとがき
今井さんのお話の中で印象的だったのは、「挑戦したことや、興味を持ってやってみたことは、全部どこかでつながっていく」という考え方です。
今、自分が取り組んでいることや好きなことが、将来どのようにつながるかは分からないかもしれません。それでも、目の前のことを大切に積み重ねることで、いつか思いがけない形で未来につながることもあるのだと感じました。
高校生の頃から抱き続けてきた夢の実現に向かって歩み続ける今井さん。これからどのような形で多くの人の健康やスポーツ環境を支えていかれるのか、その活躍がますます楽しみです。
