今回お話を伺ったのは、福岡大学バレーボール部で競技に励み、卒業後は母校で大学助手として勤務するなど、競技から少し離れた時間を経て、Vリーグを目指すクラブとの出会いをきっかけに現役復帰を果たし、現在は福岡市を拠点に活動する日本バレーボールリーグに所属している「福岡ギラソール」でキャプテンとしてチームを牽引するとともに、クラブ運営にも携わる髙山侑花選手です。
競技者として、そしてクラブを支える一員として挑戦を続ける髙山選手に、これまでの歩みや大切にしている想い、そして新たな目標へ向かう「心ときめく歩きかた」を伺いました。
「どんな立場にも意味がある」経験を重ねて見つけた役割
高校時代、「こういう人になりたい」と心から思える恩師と出会い、高校の体育教師になるという夢を叶えるため、教員免許を取得できる福岡大学へ進学しました。
大学では、日本一を目指すバレーボール部で4年間を過ごしました。当時はユニフォームを着ることすら簡単ではない厳しい環境でしたが、レベルの高い選手たちと切磋琢磨する中で、「レギュラーだけがすべてではない」という考え方を学びました。試合に出場できない時でも、自分にできる役割は必ずある。その姿勢が、今の自分の土台となっています。
特に印象に残っているのは、Bチームに所属していた時の出来事です。ある同期が「BチームがAチームに勝ったら、自分たちが日本一じゃない?」と話したことがありました。その言葉を聞いた時、「本当にその通りだ」と考え方が大きく変わりました。Aチームだけが強くなるのではなく、Bチームも日本一を目指して努力するからこそ、チーム全体の力が底上げされる。その経験を通して、どの立場にもチームを強くする役割があることを実感しました。
大学卒業後は一度選手生活から離れ、福岡大学で助手として勤務しながら、バレーボール部のコーチを務めました。その後、「福岡でVリーグを目指すチームが立ち上がる」との紹介を受け、トライアウトに挑戦し、現役選手として再びコートに立つことを決意しました。
選手だけでなく、指導者という立場も経験したことで、監督やコーチがどのような視点で選手を見ているのか、どのような選手を試合で起用したいと考えているのかを理解できるようになりました。さまざまな立場を経験したからこそ、その時々の自分に求められる役割を考えながら行動することの大切さを実感しています。
だからこそ、これから年齢を重ね、いつかレギュラーではない立場になる時が来たとしても、その時々で自分にできる役割を果たしていきたいと思っています。そして、若い選手たちに「チームを強くするために本当に大切なこと」を伝えながら、次の世代へとつないでいける存在でありたい。どのような立場になってもチームの力になれる選手であり続けることが、私の目標です。


クラブ運営で見えた新たな景色
前シーズンからクラブを運営する会社へ入社し、選手としてプレーするだけでなく、クラブ運営にも携わるようになりました。トークショーやイベントの企画・運営、スポンサー企業への営業活動などを担当し、日中はクラブのために働き、夜はチームで練習に励む毎日を送っています。
中でも印象に残っているのが、スポンサー企業や自治体への訪問です。営業経験はまったくなく、何も分からない状態からのスタートでしたが、「まずは自分たちのことを知ってもらいたい」という思いだけを胸に、一つひとつ訪問を重ねてきました。
その中で、今でも忘れられない出来事があります。ある自治体を訪問した際、窓口で対応してくださった女性が「バレーボールチームもあるんですね。機会があれば見に行きます」と声をかけてくださいました。その時は何気ないやり取りでしたが、後日、その方がホームゲーム会場へ足を運んでくださったのです。
しかも、その方は初めてのバレーボール観戦にもかかわらず、「また来ました」と翌日も会場へ来てくださり、グッズまで購入してくださいました。その姿を見た時、自分の足で会いに行き、想いを伝えることの大切さを心から実感しました。誰かが初めて試合を観戦し、クラブのファンになってくださる瞬間に立ち会えたことは、選手としても運営に携わる立場としても、大きな喜びでした。
今ではホームタウンだけでなく、遠方から試合を見に来てくださる方も少しずつ増えてきています。訪問した企業や自治体の皆さんが会場で声援を送ってくださる姿は、選手として大きな励みになっています。今シーズンもチケット配布などの活動を続けながら、県内各地へ足を運び、クラブを知っていただく機会をさらに広げていきたいと考えています。
また、クラブ運営に携わったことで、試合は決して選手だけでは成り立たないことを改めて実感しました。スポンサー企業の皆さん、自治体の方々、そして、家族との時間や大切な休日を割いて試合運営を陰で支えてくださっているスタッフの皆さん。本当に多くの方々の支えがあって、私たちはコートに立つことができています。
だからこそ、その支えに結果で応えられる選手・チームでありたいという思いは、以前にも増して強くなりました。一人でも多くの方にクラブを好きになっていただき、その応援に結果で恩返しをする。そしていつか、福岡県全体から愛され、応援されるクラブへと成長していくことが、今の私の目標です。



8年越しにたどり着いた「夢のVリーグ」
福岡ギラソールとして活動を始めて5年、前身チームから数えると約8年。「Vリーグ参入」という一つの目標を追い続け、昨シーズン、ようやくその夢を実現することができました。
Vリーグへ参入するためには、競技成績だけでなく、クラブ運営や活動実績、継続年数など、さまざまな条件を満たさなければなりません。競技では結果を残していても参入を断念せざるを得なかった年もあり、「今年こそ上がれる」と信じていただけに、本当に悔しい思いをしてきました。
それでも、「Vリーグ昇格を達成するまでは絶対に辞めない」という思いを胸に、チーム全員で同じ目標を見据え、一歩ずつ歩みを重ねてきました。そして、スポンサー企業や地域の皆さんなど、クラブを応援してくださる方が少しずつ増えていく中で、「絶対にこのチームをVリーグへ上げたい」という思いは、ますます強くなっていきました。
そして、ついにVリーグ参入が決まった日のことは、今でも鮮明に覚えています。結果は昼頃に発表されると聞いていたため、それぞれが仕事をしながら連絡を待っていました。そして、コーチから届いた「やっと桜が咲きました」というメッセージを見た瞬間、本当にうれしくて、自然と涙があふれてきました。
その日の夜の練習では、前身チームの頃からともに戦ってきた仲間たちと顔を見合わせ、「やっと上がれたね」と喜びを分かち合いました。長い時間をともに歩んできた仲間だからこそ、その一言には言葉では表せないほどの思いが込められていました。


そして迎えたVリーグ初年度。初めての有料試合にもかかわらず、開幕戦から200〜300人もの方々が会場へ足を運んでくださいました。Vリーグのロゴが入ったユニフォームに袖を通し、美しく整えられたコートに立った瞬間、きらびやかな装飾やフラッグが目に入ったとき、言葉にできないほど心が震えました。「本当にここまできたんだ」と、これまで積み重ねてきた果てしない時間が、ようやく一つの形になったことを、肌で、強く感じた瞬間でした。
中でも印象に残っているのが、岡垣町で開催したホームゲームです。1,000人以上もの方々が来場し、会場は立ち見が出るほどの満員となりました。体育館全体が一体となって応援してくださる光景は、まるで会場が揺れているような迫力でした。地域の方からも「こんなに立ち見が出る大会は初めて」と声をかけていただき、多くの方々に支えられながらここまで歩んでくることができたのだと、改めて感じました。
苦しかった時間も、悔しかった日々も、すべてがあったからこそ見ることのできた景色は、今でも忘れることのできない特別な思い出です。
そして、Vリーグ2シーズン目を迎えた今年は、「日本一」を目標に掲げています。支えてくださるスポンサー企業や地域の皆さん、スタッフ、仲間、そして応援してくださるすべての方々への感謝を忘れず、自分にできる役割を果たし続けたいと思っています。
8年かけてたどり着いたVリーグは、私にとってゴールではなく、新たなスタートラインです。この8年間で学んだ、目標に向かって挑戦し続けることの大切さ、そして、どんな夢も決して一人では実現できないということを胸に、これからも一歩ずつ前へ進み、日本一、そしてSVリーグという新たな夢の実現を目指していきます。



あとがき
取材を通して印象的だったのは、髙山選手の言葉の一つひとつに、これまで積み重ねてきた経験や、周囲への感謝の気持ちが表れていたことです。
競技者としてだけでなく、クラブ運営にも携わる現在だからこその視点を持ち、チームを支えるために自分ができることを考えながら、一つひとつの役割に真摯に向き合う姿勢が印象に残りました。
これからもキャプテンとしてチームを牽引しながら、新たな目標へ向かって歩み続ける髙山選手。その一歩一歩がどのような景色につながっていくのか、今後の活躍を楽しみにしています。
貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
