今回取材したのは、社長・幹部コーチ/組織開発コーチとして活動されている中村貴之氏です。
中村氏は、日本体育大学大学院を修了後、明治学院大学男子ラクロス部のフルタイムコーチに就任。部員10名規模だったチームを、4年間で115名規模へと成長させるなど、組織づくりや人との関わりを大切にしながら歩みを重ねてこられました。
その後は日本体育大学での勤務を経て、2022年よりフリーランスとして独立。現在は、企業や教育機関など幅広い現場で、1on1やチームサポートを通して“対話から生まれる変化”に向き合い続けています。
今回の取材では、そんな中村氏が大切にしている価値観や、「心ときめく歩き方」についてお話を伺いました。
ぜひ最後までご覧ください。
コーチングに至るまでの歩みとキャリア形成
コーチングに辿り着くまでには、高校時代、当時の先生から「教師に向いているのではないか」と勧められたことが一つのきっかけとなり、日本体育大学への進学を決意しました。もともとサッカーや野球に取り組んでいたこともあり、スポーツに関わり続けられる環境で学びたいという思いも強くありました。
進学にあたっては、自分の意思で東京に出ることを決め、情報を集めながら、青森から上京しました。当時は、「もっと広い世界を見てみたい」という思いが強く、よりレベルの高い環境に身を置くことで成長できると考えていました。また、生活費を賄うために新聞配達のアルバイトをしながら日々を過ごす選択も含めて、振り返ると、これらの経験は自分にとって大きな転機だったと感じています。
大学ではラクロス部に所属し、競技に打ち込む一方で、後輩の指導にも携わるようになりました。その中で、後輩たちが目を輝かせながら取り組んだり、「またやってみます」と前向きに変化していく姿を見ることに、大きなやりがいを感じるようになりました。人の変化を引き出すこと、そしてその成長を支えること自体に面白さを感じ始めていました。
当初は教師を目指して学んでいましたが、大学の授業で「コーチング学」に触れたことで、大きく価値観が変わります。より良い授業づくりや教育そのものを研究する教師の道よりも、言葉の使い方や環境設定、コミュニケーション、人としての在り方などを体系的に学び、実践・検証していくコーチングに強く惹かれていきました。
そんな中、卒業のタイミングで日本体育大学にコーチング学の大学院が新設されることになり、その一期生として進学。大学院修了後は、明治学院大学男子ラクロス部で4年間プロコーチとして活動しながら、個人向けのコーチングサービスも展開していきました。その後、日本体育大学では教員へキャリアチェンジし、大学の教職員向けの1on1コーチングやセミナー企画・運営、チームビルディングサポートの業務を通して、コーチングと組織開発の両面から人や組織の成長に関わるキャリアを歩んでいきました。


未知との出会いが育てた価値観
自分を動かし続ける原動力は、未知の人や世界との出会いにあります。新しい価値観や環境に触れた時に感じる「面白さ」や「楽しさ」は、“好き”という感覚以上に、自然と求めてしまうものかもしれません。
未知の環境に飛び込むときには、不安を感じる場面は何度もありましたが、自分自身を客観的に見る「内観」を通して、成長につながる必要なストレスと、自分をすり減らす不必要なストレスの線引きを理解しておくことが大切だと考えています。そうして自分に合った一歩踏み出すことで、これまで見えていなかった可能性や出会いが広がっていきます。
これまでの経験や出会ってきた人、置かれてきた環境も含めて、すべてが学びであり、誰もが自分にとっての“先生”のような存在だったと感じています。そして、その積み重ねが今の自分につながっています。
また、その延長として「自分を接待する」という感覚も持っています。例えば、「もし一生で一台しか車を持てないとしたら、その車をどう扱うか」という問いを通して、自分自身に与えられているこの身体や人生の扱い方を見つめ直しています。一生で一台の車だと思えば、大切に扱い、手入れをし、性能を高めていくように、自分自身にも丁寧に意識を向けるという感覚です。
さまざまな経験を重ねる中で、自分にとって心地良い状態や適切なバランスを探り、身体のケアも意識的にスケジュールできるようになると、自分を大切にできるようになります。その結果として、自然と他者のことも大切にできるようになり、人とのつながりも広がっていきます。そうした関係性の中から、新しい機会や選択肢が生まれていくのだと感じています。


「人との関わりを通して価値を届ける」
現在、経営者層を中心に定期的に1on1のコーチングを行っています。その時々の課題や状況に応じて関わり方を変えながらも、基本にあるのは「相手の中にある答えや可能性を引き出す」という姿勢です。対話を通して、相手自身がまだ気づいていない価値観や選択肢に触れていけるような関わりを大切にしています。
その上で意識しているのは、年齢や性別、経歴、役職といった肩書きにとらわれないことです。表面的な情報だけではなく、その人の内側にある価値観や信念、これまで歩んできた背景に関心を持ち、「その人の人生を一緒に読み解く」ような感覚で向き合っています。
また、一般的な社会の価値観と自分自身の在り方とのバランスについて考え続ける中で得た、マインドの整理の仕方や物事の捉え方について、学生や企業の方々に向けて伝える活動も行っています。単に知識を教えるのではなく、「自分自身とどう向き合うか」を考えるきっかけを届けたいと考えています。
今後は、海外でのビジネスや他分野への活動も視野に入れていますが、「人との関わりを通して価値を届ける」というスタンスは変わりません。コーチングは自分にとって単なる仕事ではなく、人との関わりそのものが本質であり、人生そのものにつながっていると感じています。


あとがき
今回お話を伺う中で印象的だったのは、青森から東京へ出て、自ら環境を変え、学びや挑戦を重ねてきた歩みの中に、“正解を探す”というよりも、「自分はどう在りたいのか」を問い続ける一貫した姿勢が流れていることでした。
その姿勢そのものが、多くの人にとって、自分自身と向き合うきっかけや、新しい一歩を踏み出す勇気につながるのではないかと感じています。
今回のインタビューでは、ご自身のこれまでの経験や考え方をとても丁寧に言葉にしてくださり、一つひとつのお話から多くの学びや気づきをいただきました。貴重なお時間の中でお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。今後のご活動や新たな挑戦も楽しみにしております。
