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「心が動く方を選び続ける」自分らしく歩む道のつくり方

今回お話を伺ったのは、現在、東京ヴェルディ・女子ビーチサッカーチーム「東京ヴェルディプライアナBS」に所属し、デザイン会社「meU design」、株式会社アースリズムの取締役を務める柏野海佑氏。

これまで、関東女子サッカーリーグ2部・FC町田ゼルビアレディースや、京都フットボールリーグ1部・マッチャモーレ京都山城などでプレー。現役時代からスポンサー企業とともに自身の事業にも取り組み、選手としてだけでなく、ビジネスの世界でも自らの道を切り拓いてきました。

一度は現役を離れ、会社経営に軸足を置いた時期を経て、今年からビーチサッカーの舞台で現役復帰。経営者として事業を動かしながら、選手としても、もう一度高みを目指しています。

なぜ、再び「選手」という道を選んだのか。これまでの挑戦の先に、どんな未来を描いているのか。柏野氏のこれまでの歩みと、これから目指す景色について、「心ときめく歩き方」を伺いました。

「サッカー選手の私だからこそできる仕事」をきっかけに、デザインの道へ

高校卒業後は、一度スポーツトレーナーの専門学校に進学しました。そんな中、FC町田ゼルビアレディースから声をかけていただいたことをきっかけに、改めて自分が本当にやりたいことを見つめ直し、サッカーに一本化することを決めました。

その後、チームを通じてスポンサー企業を紹介していただき、「せっかくサッカー選手として活動しているのであれば、競技に集中できるような形で、自分の可能性を広げられる仕事をしてみたらどうか」とご提案いただきました。

そこで、絵を描くことや、頭の中で描いているものを形にしたり、資料を作ることなど、自分が得意だと思っていたことについてお話ししたところ、「うちの事業の商品パッケージや、ふるさと納税の返礼品のデザインに挑戦してみないか?」と声をかけていただきました。

競技生活をサポートしていただく代わりに、デザインという形で仕事をする。いわゆるスポンサーというよりも、仕事を通じて、初めてのクライアントになっていただいたような形でした。

当時は見よう見まねで始めたデザインの仕事でしたが、競技と仕事を両立する仕組みが作れないかと一緒に模索してくださったおかげで、サッカーにも不自由なく取り組み続けることができ、今では法人を設立し、今年で3期目を迎えました。個人事業主として活動していた時期まで含めると、約10年になります。

現在はデザイン制作にとどまらず、テレビ東京さんの60周年記念祭のクリエイティブを担当させていただいたり、イベントのサポートや広告代理店業にも携わったりと、少しずつ仕事の幅が広がっています。

こうして今の活動を続けてこられたのも、あのときの出会いが、自分の得意なことを仕事にするきっかけを与えてくれたからです。

振り返ってみると、学生時代は「サッカー以外に、自分は何がやりたいんだろう」と考えていました。それでも、その時々で自分の心が動くものを大切に、一つひとつ選択してきました。

そうやって自分の心が動く方向へ進んでいくと、その先で、自分がやりたかったことをすでに実現している人に出会ったり、新しいことにつながる出来事が起きたりする。そんな「ときめく人」や「心が動くもの」との出会いを大切にしてきたからこそ、今、自分が進みたい方向へ歩むことができているんだなと実感しています。

もちろん、一度やってみて「あ、やっぱり違った」と思うこともあると思います。でも、それも実際に経験したからこそ分かること。一つひとつの選択ですぐに答えを出すのではなく、また次の「心ときめく」ものを探していく。

その時々で自分の心が動く方向を選び続けた先に、自分らしい道をつくれると思っています。

ハードな環境に身を置く「やっちゃえ精神」

サッカー選手として、これまで様々な移籍を経験してきましたが、次の所属先がなかなか見つからず、「どうしよう」と悩んでいた時期もありました。

そんなとき、当時J1リーグ・京都サンガF.C.に所属していた加藤順大選手が、現役引退を機に京都府1部リーグのチームの監督に就任し、「男子チームで選手をやる気はあるか?」と声をかけていただいたんです。

男子チームなので、もちろんレベルは非常に高い。でも、そのときは迷わず「あります」と答えて、1週間後には練習参加に行っていました。

チームに参加してからも、女子選手だからと特別に気を遣われることもなく、一人の選手として対等に受け入れていただき、試合にも出場させてもらいました。

その期間には女子チームの練習にも何度か参加していましたが、男子チームでプレーした経験が圧倒的に自分の自信につながっていて、振り返ってみると、選手人生において大きなターニングポイントになりました。

どれだけ高いレベルの環境でも、チームからオファーをいただいて、移籍を決断してからサインをするまでは、本当に一瞬です。だからこそ、その先の苦労を考えすぎず、まずはフレッシュな気持ちで、何事も「やってみよう」と飛び込む意識を大切にしています。

「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」というたとえがありますが、私の場合は、自分で自分を、あえて谷に落としているんだと思います(笑)。

谷に落ちた直後は、その環境の厳しさに圧倒されます。でも、そこで必死にやり切った経験は、必ず自分の中に残っていく。だから、一度谷に落ちたら、そこでできることを精一杯やって、やり切ったら一度区切る。そして、また次の谷を探す。その繰り返しなんです。

そうした経験を重ねていくと、「こういう谷は、こうやって乗り越えればいい」ということが、少しずつ分かるようになってきます。以前だったらただ圧倒されていたような状況でも、今では「あ、これはこういう谷だな」と、少し冷静に捉えられるようになりました。

そうやって挑戦するたびに、少しずつ対応できることが増えていく。自分から一歩踏み出した経験が、次の挑戦への自信になり、今の自分につながっているんだと思います。

サッカーから離れて見えてきたもの

現役引退のきっかけは、シーズン終了間近での全治1年の怪我でした。怪我をきっかけに次の移籍の話もなくなり、そこから1年間、リハビリに向き合うことになったんです。

その間、ずっと「この先、自分はどうしたいんだろう」と考えていました。そして、最後に監督から次のシーズンについて聞かれたとき、その瞬間の自分の気持ちに従い、スパッと引退を決意することができました。

最後に監督から、「選手ってみんな、引退するタイミングをなかなか決められないんだよ。やりたいことがなくても、『もう少しやろう』って、なんとなく続けてしまう人も多い。そのうち試合に出られなくなって、ベンチでずっともどかしい思いをすることになる。でも、お前は自分の気持ちに従って引退を決めた。それはすごくいい判断だったと思うよ」と言っていただきました。

その言葉を聞いて、「これで後悔なく終われるな」と、ようやく思うことができました。

悔いなく一度サッカーから離れたことで、そこからは気持ちを完全に切り替えて、自分自身をアップデートするための時間として、数年間、仕事にフルコミットすることができました。

当時は、もう一度サッカーをするつもりはありませんでした。ところが、仕事を通じてスポーツ業界と関わる機会が増えていく中で、少しずつ「一度競技から離れた自分だからこそ、見えるものがあるんじゃないか」と思うようになったんです。

そんな中、日本一を目指す東京ヴェルディのビーチサッカーチームから声をかけていただき、再び競技の世界に戻ることを決意しました。

一度競技から離れたからこそ、若い選手としてフレッシュな気持ちでプレーしていた頃とは、少し考え方も変わったと思います。

チームを運営することの大変さや、選手との関係性、そして選手として自分が担う立場や役割など、以前よりも少し俯瞰して、さまざまなことを見られるようになりました。

選手としてプレーすることだけではなく、そうした視点も含めて、この場所でたくさんの経験を積んでいきたいと思っています。

そして、いつか改めて競技を引退するときに、ここで得た経験が、また自分自身の成長につながっているんじゃないかなと信じています。

だから今は、先のことを考えすぎず、まずは目の前の1年を大切にしていきたいと思っています。

ブレない「最終的な人生の目標」

サッカーや仕事を通してたくさんの経験を積み、自分自身の力をつけていった先に、ずっとブレずに掲げている人生の目標があります。それは、「最強のお母さんになる」ことです。

もちろん、仕事を通して成し遂げたいこともたくさんあります。でも、「何のために仕事をするんだろう」と考えたとき、最終的には、仕事も豊かな家庭を築いていくための一つの手段なのだと思っています。

幼い頃から、周りには起業している人が多く、仕事に熱く向き合いながらも、家族との時間を大切にしている姿を身近で見て育ちました。だからこそ、私自身も、仕事も家庭も、どちらも大切にできる人生を歩みたいと思っています。

それは、経済的な豊かさだけではありません。これまでの人生で培ってきた知識や経験、人とのつながりを、次の世代につないでいきたい。子どもが「やりたい」と思ったことには、できる限り挑戦させてあげられる環境をつくりたい。そして、何があっても子どもの味方でいられる。そんな存在になりたいと思っています。

サッカーも、仕事も、その先にある人生も。すべてを通して、いつか「最強のお母さん」になれるように。そこだけは、これからも変わらずに目指していきたいと思っています。

あとがき

今回、柏野さんのお話を伺って強く感じたのは、「心ときめく選択」は、一度きりの大きな決断ではなく、その時々で何度も選び続けていくものなのだということでした。

「やってみたい」「この人、素敵だな」と心が動いたら、まずは飛び込んでみる。そこで得た経験や出会いが、また次の「心ときめく」選択へとつながっていく。サッカーも、デザインも、そして一度競技を離れた経験も、すべてが今の柏野さんにつながっているのだと感じました。

「最強のお母さんになる」という人生の目標も含め、柏野さんの歩みから、自分が大切にしたいものを軸に、その時々の「心ときめく」方向へ進み続けることの大切さを教えていただきました。

これからも、心ときめく選択を重ねながら、自分らしい道を切り拓いていく柏野さん。その歩みの先にある新たな挑戦と、さらなるご活躍を楽しみにしています。