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車いすラグビー審判員として、ロサンゼルスを目指す⸺石井さんの挑戦

審判員の道を歩み始めた理由、国際審判を目指す背景をお聞きし、石井さんにとっての『心ときめく歩き方』を伺いました。

⸺心ときめく瞬間を求めて

高校生の頃、合宿で足を怪我した際に担当してくれた理学療法士に憧れ、理学療法士を目指そうと考えていた時期がありました。その後、体育教師や、それに近い形でスポーツに関わる仕事ができればいいなと考え、大学を選ぶ際には「スポーツに関わる」という大きな軸だけを持ち、結果的に筑波大学へ進学しました。その後の進路としては、大学院進学を考えていました。やりたいことが明確に決まっていない中で、企業を比較しながら就職先を決めることに違和感を感じていたこと、また、大学までラグビーしかしてこなかったため、自分のやりたいことを見つけるための時間を作りたいという想いがあっての選択でした。

そんな中で、大規模な国際スポーツ大会の運営に関わる仕事があることを知り、東京オリンピック・パラリンピックの際にオリンピック放送機構OBSでインターンを経験。将来的にそうした分野で働く道もあるのではと考えるようになりました。また、ちょうど次のオリンピックとラグビーワールドカップがフランスで開催されることもあり、ヨーロッパへの留学を決意。スポーツマネジメントやオリンピック教育に力を入れている教授に相談し、最終的にフランス・リールの大学院でスポーツマネジメントを専攻することになりました。

⸺車いすラグビーとの出会いから審判員の道へ

パラリンピックに何かしらの形で関わりたいなと感じて、車いすラグビークラブチームにfacebook で連絡を取ったのが競技との最初の出会い。そして、ポーランドで車いすラグビーの大会にテーブルオフィシャル(スコアキーパー)として関わった際、ピッチ内で走っていた審判が、国際審判としてリオ大会に出場していることを知りました。これまで自分は選手として最上を目指す環境に身を置いてきましたが、車いすラグビーであれば、選手を引退した後でも、審判としてさらなる高みを目指せるという可能性を感じました。そのとき、審判という役割の魅力に気づいたのだと思います。ゆくゆくはオリンピック放送機構やラグビーの連盟、ワールドラグビーに所属することも視野に入れていました。しかし、実際にスポーツマネジメントを学ぶ中で、運営などのピッチ外での活動に対し、「自分が本当に求めているものではないのではないか」と考え始めるようになりました。そんな時に出会ったのが、審判という道。そこから、当時フランスにいた2 人の国際審判のうちの1 人が、フランスのトゥールーズで現役の国際審判として活動していることを知りました。その審判のもとで学ぶことができれば、より実践的なスキルを身につけられると考え、トゥールーズへ足を運びました。

⸺フランスでの経験と審判としての課題

フランスでは、車いすラグビーのクラブチームが一般のラグビークラブと併設されており、試合数も非常に多くなっています。金曜日にスーツケースを持って講義に行き、そのまま試合会場へ移動⸺そんな生活を送りながら、毎週のように試合を経験していました。審判を始めたばかりの頃は、アスリートと同じように、基礎的な知識や技術を身につけることが重要でした。特に審判は、試合の流れを予測しながら動く力が求められます。例えば、ある選手がボールを受けたとき、次にどの方向へ進むのか、どのプレーヤーを使って攻めるのかを予測する。さらに、どこでファウルが発生しそうか、どんなプレーが展開されるのかを瞬時に判断する必要があります。また、笛を吹く際には「なぜ今のプレーが反則なのか」という明確な理由を持っていなければ、自分の判断に自信が持てなくなる。だからこそ、審判には心理的なマネジメント能力も求められます。

⸺国際的な経験と強み

審判を始めてから約600日が経ちましたが、すでに国際大会での審判経験を積むことができました。これは、他のスポーツではなかなか得られない貴重な機会だと感じています。世界的に見ても、国際審判のライセンスをまだ持たない状態で、ドイツ、ポーランド、フランスなどの大会で経験を積み、さらにフランス代表の合宿に参加し、オランダ、デンマーク、イギリスのタレントチームと試合をする機会を得たことは、大きな強みだと考えています。各国の審判にはそれぞれの特色があり、日本の審判の強みはルールに対する深い理解と知識の幅広さ、そして規則を厳格に守る姿勢です。一方で、ゲームマネジメントや選手とのコミュニケーションに優れた審判が多い国もあり、各国の審判の持つ特色を実際に体験できたことは、自分にとって大きな財産となっています。特に日本は地理的に他の強豪国と距離があるため、海外の審判との交流が少ないのが現状です。また、英語を話せる審判が少ないことから、国際ルールの翻訳における微妙なニュアンスの違いが課題となる背景もあり、日本では国際審判の役割がますます求められていると強く感じています。

⸺歩み続けられた理由

ドイツで行われた世界最大級のアマチュア車いすスポーツ大会で事前に審判歴を聞かれて、当時1 年ちょっとだったので正直に伝えました。すると、一番下のリーグを担当することになったんです。フランスからわざわざ来たのに、一番下のリーグか……と少し残念に思いながら試合を担当しました。でも、その試合で一緒に笛を吹いたレフェリーがたまたま資格審査を受けている最中で、その試合を見ていたヘッドレフェリーが審判技術を評価してくれて、『お前はこのリーグじゃなくて、もっと上の試合を担当すべきだ』と言ってくれたんです。この評価を受けて、大会の上位リーグの試合を任されることになり、最終的に決勝戦の審判を担当することになりました。

こういった大会では、決勝戦はその大会で最も優れていた審判が担当することになっています。自分が決勝の笛を吹けたということは、それまでの試合でしっかと評価を得られた証。審判は自分の成果が目に見えにくい仕事ですが、こうして努力が認められる瞬間があることが、続けるモチベーションになっています。そしてこの2 年弱で、国際審判の道を狙えるところまで来ることができました。これは私の努力だけでなく、周囲のサポートがあったからこそ。そうやって目標に向かって進めるのが、車いすラグビーの魅力のひとつだと感じています。

取材を終えて⸺石井さんの行動力と挑戦する姿勢

この記事を最後まで読んでくださった方には、石井さんの圧倒的な行動力、そして自分の立ち位置を理解しながら努力を続ける姿勢が、実績につながっていることを感じていただけたのではないでしょうか。とてもパワフルに海外を飛び回り、常に新しい環境に挑戦し続ける。その姿勢こそが、今の石井さんをつくっているのだと実感しました。

これから目指す国際審判という目標も、石井さんにとってはまた一つのスタートラインなのかもしれません。その挑戦がどのような未来につながるのか、今後の車いすラグビーの発展とともに、石井さんの審判としての歩みにも注目していきたいと感じました。

この度は貴重なお話をありがとうございました。

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ヴァローズがお届けする『心ときめく歩き方』とは

「心から実現したい」と思える目標を見つけ、その実現に向けて努力することは、人生をより充実させるものです。本特集では、学生アスリートが将来について考えるきっかけを提供するとともに、社会人にとっても新たな発見やインスピレーションを与えることを目的としています。石井さんの歩んできた道を通じて、多様なキャリアの選択肢や挑戦することの価値を伝え、読者が『心ときめく歩き方』を見つけるヒントとなることを願っています。