【対談企画】「宇美町」と女子サッカークラブ「福岡J・アンクラス」が連携に関する協定を締結

宇美町総合スポーツ公園にて、「宇美町」と女子サッカークラブ「福岡J・アンクラス」が連携に関する協定を締結し、地域とクラブがともに助け合う、新たな一歩を踏み出しました。

締結式後、VARROWS.NETの取材のために特別に対談の時間を設けていただき、宇美町長・安川茂伸氏、福岡J・アンクラス上田涼斗監督、キャプテンの平坂咲希選手にご登場いただきました。締結に至った背景や、今後の展望についてじっくりとお話を伺いました。

⸻今回の締結にあたって、宇美町としてはどのようなことを期待されていますか?

安川町長:福岡J・アンクラスさんは、なでしこリーグへの復帰、そして女子プロサッカーリーグ「WE LEAGUE」への参入をめざしておられます。そのクラブを応援する”町”としてどうあるべきかという観点から職員とともに議論を重ねてきました。

試合を観る人、プレーする人、そしてボランティアなどで支える人――「するスポーツ」「観るスポーツ」に加えて、「支えるスポーツ」も、地域にとって非常に大切な要素だと感じています。この町に「今度の日曜日はアンクラスの試合を観に行こう」と思う人が、1人でも増えてくれると嬉しいですし、様々な関わり方が若い世代だけでなくシニア世代にも広がっていけば、町全体が自然と盛り上がっていくのではないかと期待しています。

そして、私たちの町にある「宇美八幡宮」は神功皇后が応神天皇を安産でお産みになられた地として、今でも多くの女性が安産祈願に訪れています。そういった背景もあり、宇美町では現在「子育て政策」や「女性の活躍支援」に非常に力を入れています。今回の協定は、その流れとも一致しており、「女性に優しい町」という宇美町の姿勢を対外的にアピールできる機会にもなると考えました。

さらに、スポーツツーリズムの視点からも、町を訪れる方が増えることを期待しています。宇美町にはスイーツ店が多く、SNSで紹介された行列ができるケーキ屋さんやかき氷屋さんなど、とても充実しています。そういった町にあるお店を巡る楽しみも感じていただけると、町の魅力を発信する機会になると考えています。

⸻今後、福岡J・アンクラスは地域にとってどんな存在になっていきたいと考えていますか?

上田監督:もちろん、私たちは上のリーグを目指しています。ただ、その過程で何より大切なのは“町の活性化”だと考えています。地域があってこそ、クラブは存在できます。町が発展することは私たちにとっても大きな意味がありますし、私たちが強くなることで地域に貢献できることも確実に増えていくと思います。「相互協力」という言葉を常に意識しながら、選手・スタッフ・クラブ一丸となって、日々の取り組みを積み重ねていきたいと考えています。

⸻“ホームタウン”となる宇美町での活動にあたり、選手としてどのような心構えで取り組んでいかれますか?

平坂選手:先日、宇美町総合スポーツ公園で練習させていただいた際、ランニング中にすれ違った地域の方々から「おはよう」と声をかけていただきました。その何気ない一言がとても嬉しく、地域の温かさに触れることができたように感じました。私たちは朝早くから練習をすることも多いので、これからも少しずつ地域の皆さんと顔を合わせる機会が増えていくと思います。そんな日常の中で自然と交流が生まれ、応援していただけるきっかけにも繋がっていけば嬉しいです。

地域とのつながりを感じながら、まずはサッカーに全力で向き合うことが私たちの役割。プレーを通して、地域の皆さんに元気や活気をお届けできるよう、日々ステップアップしていきたいと思います。これからの宇美町での活動や出会いも、今からとても楽しみにしています。

⸻「ヴィアマテラス宮崎(2021年に宮崎県新富町で発そくされた女子サッカークラブ)」を参考に選手もホームゲームを視察されたと伺いました。実際に試合を観戦されていかがでしたか?

平坂選手:発そくして間もないチームですが、地域の皆さんにしっかりと根付いていて、ホームタウンとのつながりが強いと感じました。試合の日には、地域の方々によるキッチンカーも出て、観客数もリーグの中でトップクラス。地域と一体になった応援の雰囲気がありました。私たちも、試合で勝つ姿を見せることを通して「女子サッカーって面白い」と思ってもらえるようになりたいです。そして、地域の皆さんと互いに関わり合いながら、支え合っていける関係を築けたら嬉しいです。

⸻福岡J・アンクラスは39年という長い歴史を持つクラブですが、監督に就任されてまだ間もない中で、今回の締結までスピーディーに動かれたことが非常に印象的でした。宇美町と出会うまでに、どのような準備をされてきたのでしょうか?

上田監督:宇美町と出会うまでの間、福岡県内の地域ごとの特徴や他クラブの事例、なでしこリーグへの参入条件など、あらゆる観点から調査と検討を重ねてきました。

当初は、なでしこリーグへの再参入を目指すにあたって、ぜひ一度お話をさせていただきたいという思いから、今年の2月頃より町長にお会いするためにさまざまなアクションを起こしてきました。本当に、“わらにもすがる思い”で必死だったのを覚えています。

結果として、町長とお話しする機会をいただき、役場の皆様とも丁寧に協議を重ねながら、本日を迎えることができました。正直なところ、個人的には「これで断られたらどうしよう」と不安な気持ちもありましたが、多くの方々のご理解とご協力のおかげで、今日という日を迎えられたことに、クラブ一同、心から感謝しています。

⸻締結に至るまで、どのように話が進まれたのでしょうか?

安川町長:「この町が何かの形で役に立てるのであれば」という思いで、まずはお話を伺いました。アンクラスさんのほうからも、「この町で活動したい」という強い想いをしっかりと伝えていただいたことで、私たちとしても「その想いに応えられるのかどうか」を真剣に議論する必要があると感じました。

役所内でも丁寧に話し合いを重ね、私自身もその議論に加わりながら、「これは本当にお互いのためになるのか」を慎重に検討しました。最終的には、「これはきっと、両者にとって良い形になる」という確信を持ち、私の判断として今回の締結に至りました。

上田監督:「アンクラスがこの町で“なくてはならない存在”になりたい」という強い思いを、関わってきた方々のお話をもとに整理しながら、丁寧にお伝えしたつもりです。とても短い期間の中で、こちらの無理なお願いにも快く応じていただき、スピード感をもって話を進めてくださったことに心から感謝しています。これからは、選手とともにこの町のために、しっかり頑張っていきたいと思っています。

⸻締結式の中で、佐々木則夫氏が宇美町総合スポーツ公園を視察されたと伺いましたが、どのようなお話をされたのでしょうか?

安川町長:佐々木則夫さんとは、以前から親しくさせていただいていて、1年半ほど前に一緒に宇美町総合スポーツ公園を見に行く機会がありました。そのときに「女子サッカーを誘致してみたらどうか」という話が出ていました。振り返れば、そのときからすでに布石が打たれていたのかもしれません。お話を伺った当初は、セカンドやサードホームタウンだと、地域としてもなかなか気持ちが入りにくい部分があると感じていましたが、そんな中、大谷社長(福岡J・アンクラス代表取締役)から「ファーストホームタウンとして」と明言していただけたことは、私の中で締結に向けて背中を押された大きなきっかけになりました。

佐々木さんとは年に数回お会いする機会があるのですが、昨年の冬に金沢のスタジアムでお会いした際、「あの話、どうなった?」と気にかけてくださいました。その頃から少しずつ進んでいた話が、一気に動き出して、こうして本日の締結式を迎えることができました。まさに急展開でしたね。今回締結式へのご案内もさせていただいたのですが、ちょうどスペインで行われているなでしこの試合に帯同されているとのことで、また近いうちに、ぜひ宇美町にお越しいただきたいと思っています。

⸻最後に、地域の方々をはじめ、サポーター、読者の方へメッセージをお願いします。

平坂選手:サッカーの力で地域を明るくしたいと思っています。結果を残して、もっともっと地域の皆さんにチームのことを知っていただいて、一緒に勝利の喜びを分かち合えるようなチームにしていきたいです。

上田監督:個人的な思いも含みますが、選手たちに「このチームに来て良かった」「この町に来て良かった」と思ってもらえるように、全力で頑張りたいと思っています。それがゆくゆくは、サッカーだけでなく、人生そのものにおいても「ここで良かった」と感じてもらえるような時間や環境に繋がると信じて、日々考えながら全力で走り続けていきたいです。

安川町長:まずは、選手がサッカーに専念できる環境を整えることが、私たちの役割だと考えています。先ほど平坂選手も話していたように、試合で勝利を重ねるとともに、地域の皆さんとの交流を通じて女子サッカーをより身近に感じてもらい、「私もアンクラスに入りたい」と思ってくださる方が増えれば嬉しいですね。さらに、「宇美町には福岡J・アンクラスがあるんだ」と町の方々に少しずつ浸透していくよう、地道な取り組みを続けていきたいと思います。

あとがき

宇美町と福岡J・アンクラスがともに助け合い、スポーツの力を通じて地域に活気を生み出していく——その新たな一歩を踏み出した場に、対談というかたちでご一緒させていただけたこと、大変光栄に思います。貴重な機会をありがとうございました。

歴史ある女子サッカークラブである福岡J・アンクラスが、宇美町を「ファーストホームタウン」として選び、ともにまちづくりに取り組んでいくことは、町民の皆さんにとっても大きな希望になるはずです。

今後は、スポーツ施設の有効活用や町民参加型イベントの開催、スポーツを通じた地域の魅力発信など、さまざまな取り組みが期待されます。サッカーの魅力と宇美町の温かさが重なり合うこの挑戦が、両者の未来にどのような彩りをもたらしていくのか。これからの歩みに、引き続き注目していきたいと思います。

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